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会社全体の設計図を読む

エンタープライズアーキテクチャとは?業務からITまで「全体でつながる」設計図

エンタープライズアーキテクチャ(EA:Enterprise Architecture)は、会社全体の業務・情報・システム・技術の関係を整理し、部分最適を防ぐための考え方です。「参照モデル」という専門用語も、実際には何を整理するための共通のひな型かを表しています。

今回の問いへの答え:BRMが整理するのは、会社や組織の業務そのものです。ソフトウェアの機能やデータ項目、プラットフォームの規格を整理するのは別のモデルです。
01

なぜ「会社全体の設計図」が必要なのか

全国に店舗を持つ小売企業を考えます。各店舗が「自分の店だけ便利ならよい」と、別々の販売管理システムを導入しました。A店の商品番号「001」がB店では別の商品を指し、本部では全店舗の在庫を一度に集計できません。新しいネット通販を始めようとしても、システムの接続方法が店ごとに違います。

部分最適:各店舗が独自に決める

A店:独自の商品コード / 在庫表
B店:別の商品コード / 在庫表
C店:また別の仕組み

店舗では動いても、全社の在庫がつながらない。

全体最適:共通の考え方で設計

共通:商品ID・在庫数の定義
共通:在庫照会の連携方式
共通:注文・出荷の業務分類

全店舗の情報を比較・連携しやすくなる。

EAの狙いは、単に全システムを同じ製品に置き換えることではありません。共通にすべき部分と、店舗ごとに違ってよい部分を見極めることです。

02

まず業務を整理する。それがBRM

「在庫管理システムを新しく作ろう」と技術から考え始める前に、そもそも誰が、どんな仕事を、どんな目的で行うのかを確かめます。それを共通の分類として整理するのがBRM(Business Reference Model)です。

BRMによる業務分類の例(説明用)

店舗・通販事業の業務
販売
物流
顧客対応
注文受付
販売計上
商品引当
出荷
問い合わせ
返品

この分類はソフトウェア名ではなく、実際に組織が行う仕事の分類です。「販売システムがある」という説明だけでは、何をする業務なのかが見えません。

同じ「返品」業務を店舗と通販で別々に構築する必要があるか、同じ商品データを使えるか、といった改善の議論も業務の全体像が分かって初めてできます。

03

業務を実現するには、データ・機能・技術が必要

「お客様が商品を注文し、倉庫から発送する」という同じ一つの業務を、異なる観点で見るとどうなるでしょうか。四つの参照モデルを一つの流れとして並べます。

Business Reference Model(政策・業務参照モデル)

BRM:業務を整理

私たちは何の仕事をしている?

例:注文受付・商品引当・出荷・返品対応

Data Reference Model(データ参照モデル)

DRM:データを整理

その仕事で何の情報を共有する?

例:商品ID・在庫数・注文日・顧客IDの定義

Service Component Reference Model(サービスコンポーネント参照モデル)

SRM:機能を整理

どんなソフトウェア機能が必要?

例:在庫照会・注文登録・決済・通知

Technical Reference Model(技術参照モデル)

TRM:技術を整理

それらの機能を何の技術で動かす?

例:データベース・API・認証基盤・実行環境

これは理解のために業務から技術へ並べた図です。実際の設計では各領域を行き来して整合を取ります。特に、DRMはデータの定義を共有すること、SRMはアプリケーションの機能を分類すること、TRMは技術の基盤を標準化することが中心です。

04

PRMは「設計した結果、良くなったか」を見る

ここまでの四つだけで業務とシステムの構造は説明できます。しかし、共通化のプロジェクトにお金をかけて、本当に会社は良くなったのでしょうか。

PRM — Performance Reference Model(業績測定参照モデル)

成果を、測れる指標で整理する

欠品による販売機会損失

月120件 → 40件

出荷までの平均時間

24時間 → 8時間

在庫集計の作業時間

週20時間 → 2時間

数値は考え方を示すための架空の例です。

PRMは、業務そのものを分類するBRMとは違い、投資や改善の成果をどの指標で評価するかという観点です。PRMの指標は業務やITの成果を振り返るためのもので、単に数字を集めればよいわけではありません。

05

5つの参照モデルは、何を分類するかが違う

モデル何を整理する?店舗・通販の例
BRM:業務仕事の目的・種類・流れ注文受付、物流、返品対応
PRM:業績投資・改善の成果を測る指標欠品件数、出荷所要時間
DRM:データデータの名前・意味・属性商品ID、在庫数、注文日
SRM:サービスソフトウェアの機能・部品在庫照会、注文登録、通知
TRM:技術基盤や技術の標準DB、API、認証、実行環境

参照モデルとは、特定企業の完成済みシステムを指す言葉ではありません。組織が自分たちのEAを設計するときに使う分類・整理の共通のひな型です。万能な一つのモデルですべてを表すのではなく、必要に応じて複数の視点を組み合わせます。

06

よくある取り違えを、実際の変更要求で考える

「店舗ごとに注文受付の手順が違う」

まず業務の種類と流れを整理する。中心になるのはBRMです。

「店舗ごとに商品コードの意味が違う」

データ定義を統一する。中心になるのはDRMです。

「同じ在庫照会機能を各部署が別々に作っている」

再利用できる機能を整理する。中心になるのはSRMです。

「各システムがばらばらの連携技術を使っている」

標準となる技術・基盤を整理する。中心になるのはTRMです。

「共通化したけれど、成果が分からない」

成果を測る指標を整理する。中心になるのはPRMです。

現実の課題では複数の領域が関わりますが、「まず何を整理しているのか」を見れば主となる参照モデルを見つけられます。

07

操作ラボ:会社の混乱を5つの観点で整理する

状況を選ぶと、担当すべき参照モデルと、何がまだ未整理なのかを検討できます。略語を当てるだけでなく、変更によってどんな問題が解消されるかを確認してください。

EA・参照モデル シミュレーター

問題はどこにある?何を整理すればいい?

会社の悩みを選び、まず最も直接関係する観点を考えてみましょう。現実には複数のモデルを一緒に使うこともあります。

いま起きていること

通販の返品を、店舗Aは店長が承認、店舗Bは本部が承認。担当の境界も曖昧で問い合わせがたらい回しになっている。

最初に整理すべき対象は?