経営戦略を、身近なビジネスから理解する
PPMとは?「金のなる木」で新事業を育てる
PPMは、会社が持つ複数の事業を整理して、どこで稼ぎ、どこへ投資するかを考えるための道具です。正式にはプロダクトポートフォリオマネジメント(Product Portfolio Management)と呼びます。
まず「資金の流れ」で考えよう
ある食品会社は、定番のお茶、急成長中の健康飲料、新発売のプロテイン飲料、昔ながらの炭酸飲料を扱っています。全部に同じ金額を投資したら、将来の成長に必要なお金が足りなくなるかもしれません。
定番のお茶
市場の伸びは小さいが売上シェアが大きい
安定した現金を生む
新しいプロテイン飲料
市場は伸びているが自社のシェアは小さい
成長のための投資が必要
PPMの核心は「すべての事業を単体で見る」のではなく、事業間のお金の配分を考えることです。
使う物差しは2つだけ
縦軸:市場成長率
その市場全体がどれくらい伸びているか。高いと販売機会が増える一方、成長に合わせた投資が必要になりやすい。
横軸:相対的市場占有率
自社が競合と比べてどれだけ強い立場にあるか。一般に最大競合のシェアとの比率などで捉える。
売上の金額だけで分類しないのがポイントです。例えば自社の売上が大きくても、競合他社がもっと巨大なら、相対的な市場占有率は低い場合があります。
↑ 市場成長率が高い
高成長・高シェア
収入も投資も大きい
高成長・低シェア
育てるために資金が必要
低成長・高シェア
投資資金を生みやすい
低成長・低シェア
継続・縮小・撤退を検討
← 相対的市場占有率が高い | 低い →
※ 一般的なPPM図は横軸の高低が左から右へ逆向きに配置されます。
4つの事業は、それぞれ資金の性格が違う
花形(Star)
成長率:高/占有率:高
人気市場で強い地位を持つ。ただし競争が激しく、成長を維持するための広告・設備投資にもお金がかかる。
問題児(Question Mark)
成長率:高/占有率:低
市場は伸びているが、まだ自社は小さい。投資して花形に育てるか、見切りをつけるかを慎重に判断する。
金のなる木(Cash Cow)
成長率:低/占有率:高
成熟市場で強い地位を持つ。市場拡大のための大規模投資は比較的少なく、安定した資金を生みやすい。新事業への投資原資になる。
負け犬(Dog)
成長率:低/占有率:低
市場が伸びにくく、競争上の地位も弱い。利益改善や撤退を検討する対象になりやすいが、必ず撤退するわけではない。
特に、市場成長率が低く、相対的市場占有率が高い「金のなる木」は、事業を維持するための大規模な追加投資を比較的抑えながら、安定した資金を生みやすいので、ほかの事業への投資資金源として位置付けられます。
事業が成長すると位置も変わる
これは成功した事業の典型的な移り変わりです。問題児に投資してシェアが伸びると花形になり、市場が成熟すると金のなる木になることがあります。もちろん全事業がこの順で進むわけではありません。
反対に、花形であっても競争に負けてシェアを落とすことがあります。「金のなる木」も市場そのものが縮小すれば、いつまでも稼げるとは限りません。
操作して理解する:PPMの4象限ラボ
事業を選んで市場成長率と相対的市場占有率を動かしてみましょう。分類と資金配分の考え方が連動して変わります。
事業の位置を動かしてみる
例示の閾値:市場成長率10%、相対シェア1.0倍
現在の分類
金のなる木
市場が成熟し、強い地位を持つ。安定した資金を生み、ほかの事業への投資原資となりやすい。
↑ 市場成長率 高
花形
高成長・高シェア
問題児
高成長・低シェア
金のなる木
低成長・高シェア
● 定番のお茶
負け犬
低成長・低シェア
← 相対的占有率 高 | 低 →
横軸は左が高シェア、右が低シェアです。閾値は学習のための仮設定で、実務では市場に応じて設定します。
金のなる木:安定して生む資金を、花形の維持や問題児の育成に振り向けるという考え方があります。
注意:どの象限にいるかだけでは、実際の利益額・キャッシュフローや投資成否は分かりません。別途数字を確認して判断します。
PPMが教えてくれないこともある
PPMはシンプルで便利ですが、「成長率とシェア」だけで収益性や将来性がすべて決まるわけではありません。技術革新、利益率、ブランド、事業間の相乗効果、法規制なども重要です。
要点
PPMは「今どこで資金を稼げるか」「次にどこへ配分するか」を整理するための地図。投資資金源の典型は、低成長・高シェアの金のなる木です。